Best Modules in 2024

2024年もモジュラーシンセの世界では各社から多くの興味深い新製品が登場しました。この記事ではおさらいとして、Clockface Modularで取り扱っているモジュールからテーマ別に今年リリースのものを色々と紹介していきます！

"All in One"モジュールの多機能化

2024年は色々な意味で"All in One"モジュールのリリースが目立った年でした。"モジュラーシンセ"モジュールと言える4ms MetaModuleやExpert Sleepers Disting NTはモジュールの内部で必要なツールを好きに選んで組み合わせ、自分のパッチを作るための高機能モジュール。またアンビエント的なサウンドスケープを1台で生成できるBefaco Oneiroiや実験的なCollide4など、いずれにしてもそれ1台で一つの音楽を作り出せるまでのポテンシャルを持ち、コンパクトなシステムの中心になりうるようなモジュールです。

4ms MetaModule & Wi-Fi Expander
2024年を象徴するモジュールの一つです。ソフトウェアのモジュラーシンセ、VCV Rackで作ったデータを実行できる次世代モジュールで、サウンドジェネレーターとして以外にもエフェクト、シーケンサー、ミキサー、モジュレーションソース等、VCV Rackで作ったパッチをハードウェア上で自由に操作できます。VCV Rackとのデータのやり取りはUSBメモリー/micro SDカードで行いますがWi-fi Expanderを使えば同じネットワーク内のPC/macから無線でパッチデータを受信できます。CV入力やコントロールエキスパンダー等の拡張モジュールもリリース予定。

Expert Sleepers Disting NT
多機能モジュールDistingシリーズの最新&最大作。12の入力と8つの出力を使い、Distingでお馴染みのアルゴリズムをキャパシティの許す限り何個でも使用することができます。基板面のピンと付属のTMBを接続してMIDI/I2Cでのコントロールも可能で、ここにもポテンシャルを感じます！

Befaco Oneiroi
シンセボイスを超え、ルーパー、オシレーター、フィルター、エフェクトが一つにまとめられたアンビエント・ドローンボイスモジュール。ライブパフォーマンス向けに設計されておりそれぞれのサウンドセクションはスライダーによって音量コントロールが可能です。また各パラメーターにアサイン可能なモジュレーション用LFOとターゲットを選べるランダマイザーによりパッドアンビエントやドローンサウンドを作り込むことができます。

Joranalogue/Hainbach Collide 4
Hainbachと共同開発されたユーロラック版ロックインアンプモジュール。
外部から入力された音と内部のオシレーターの周波数・位相差を検出しその結果を音と電圧で出力します。
フリーケンシーシフター、リングモジュレーター、オシレーター、フィルターと様々な用途の使い方を見出せる実験的モジュールです。

シンセボイス&VCOモジュール

10年前のモジュラーシンセといえばまずはVCO→VCF→VCAというお決まりのパッチのお勉強から始めるものでしたが、今はそれらが一体型となった、シンセボイスモジュールもたくさんリリースされるようになりました。シンセボイスを使うとスペース的にもコスト的にも、また時間的にも節約ができるので、ボイスモジュールを使うという選択も実践的です。

一方エンベロープやVCAを搭載せず、基本的に音が出続けるVCOモジュールは、波形のシンセシスにこだわりを持ったモジュールのリリースが目立ちました。アナログVCOはBuchla 259tのユーロラック版、そしてSergeの新作オシレーターMedusaと元祖西海岸シンセブランドの記念すべきリリースがありました！ 

Intellijel Designs Atlantix
SH-101インスパイアモジュールAtlantisの後継シンセボイスモジュール。
前モデルより強化されたモジュレーターは2系統の波形選択が可能となりフィルター部分にはフェイザーモードが追加されました。
オシレーターはスルーゼロFMとFM Indexの制御が追加されFMの音作りがより柔軟に可能となりシンセベースやリード音をすぐに作り出せます。

ALM Busy MCO MkII
同じくALMのデジタルオシレーターMCOがMKIIとなりよりパワーアップしたオシレーター。
カラー液晶を採用し7つの切り替え可能なボイスモードにはオリジナルMCOのウェーブテーブルに加えヴォコーダーやSIDチップエミュレーション等が追加されさらに発音/モジュレーション用のエンベロープとLFOで単体でも幅広い音作りを実現しました。
アサイン可能な３つの外部CV入力はAxonシリーズを使うことによりさらに拡張が可能。

Random*Source Serge Medusa
7つのオシレーターで構成された新世代Sergeのサブハーモニックオシレーター。
全てのOSCはパルス幅とサブハーモニック分割を個別に設定することができ力強いユニゾンサウンドやステレオ感のあるオーケストラのようなパッドサウンドを生み出します。

Buchla & Tiptop Audio 259t Programmable Complex Waveform Generator
ユーロラックBuchlaシリーズ待望のコンプレックスオシレーターモジュール。
オリジナルの259を踏襲しモジュレーションインデックスとウェーブフォルダーによる倍音豊かな音作りが可能。
同シリーズのローパスゲート292tとの相性は抜群です。

Shakmat Modular Battering Ram
シンプルな操作性で必要なパラメターを駆使してスムーズな音作りが可能なキック音源モジュール。
主要パラメーターには全てCV入力を装備し、808的な音から909チックな音を即座に作り上げることが可能です。
2種類のオーバードライブによりよりガッツのある音を作ったりHPFによって可聴域以下の低域をカットもできる優秀な音源です。

Shakmat Modular Archer's Rig
14の選択可能なノイズソースモードを持つハイハット音源モジュール。
クローズとオープンの2つのトリガー入力を持ちそれぞれディケイタイムを設定が可能。
ノイズソース部分は13のタイプの異なるデジタル音源と外部入力から選択ができ、それをアナログ回路のVCA,VCF,ディストーション,ローカットセクションを経由させるデジタルとアナログのハイブリッド設計。

RYK Modular ALGO
シンプルな操作性の4オペレーターFMオシレーターモジュール。
ボタンを押すとパネル上にFMアルゴリズムが表示され各オペレーターのレシオとデプスがノブ操作での設定が可能。
Wave Warpによりオペレーターの波形をサイン波だけでなく三角波からパルス波へモーフィングができさらにWavefolderも搭載。

ALM Busy Cizzle
Casio CZシリーズにインスパイアされたデュアルフェーズディストーションオシレーター。PDアルゴリズムをモーフィング可能なOSC Aと3つのモードを切り替えられるOSC BにはそれぞれVCAを内蔵しています。コードモードも搭載し2つのオシレーターで豊かなサウンドパレットを作り出せます。

VCF/VCAモジュール

VCOと組み合わせることが多いVCFやVCAですが、こちらも最近はVCF/Aが一体化したものなども多い印象です。ビンテージシンセでも実はVCFだけでなくVCAも合わせて音のキャラクターを作っている場合も多いので、音色へのこだわりがある方はこういった一体型もおすすめです。また近年はアナログ／デジタル問わずレゾネータータイプのフィルターも多くリリースされています。音源の他、レゾナンスを活かした音の味付けに重宝するので、より深い音作りを目指す方にはおすすめです。

Analog Sweden SWEnigiser Proto VCF/A
90年代に人気を博したシンセEnigiserの試作機を元にしたアナログフィルター/VCAモジュール。
二つのロータリースイッチの組み合わせにより12のフィルターモードを持ち、内部結線によってドライブ付きVCAに送られます。
お手持ちのオシレーターを入力してアナログシンセボイスを構築するのにお勧めのモジュールです。

Hikari Instruments VCA Timbre
CVレスポンス可変可能なVCAとBuchlaスタイルのWavefolderを2ペア備えたウェーブシェーパーモジュール。
内部結線によりVCAを通過後の音がWavefolderに送られ音量によって波形の折り返される強さが変化します。
それぞれの機能は全て独立して使用できステレオでの使用も可能です。

Erica Synths Graphic Resonant Filterbank + Expander
デジタルコントロールのアナログ10バンドレゾナントフィルターモジュール。
各バンドのレベルの設定を保存することができ外部CV/クロックでの切り替えが可能。
10バンドの増減は全て外部CVでの操作が可能でエクスパンダーを使用すればマニュアルコントロールも可能になります。

Random*Source Serge VC Resonant Equalizer (VCRESEQ)
名機Serge Resonant Equalizerに、ついに各バンドにパラアウトとCV入力が追加されたRESEQの拡張版モジュール。追加された入出力を利用したフィードバックパッチでイコライジング以上のパワフルな音作りが可能になりました。サウンドを処理するだけでなく作り出すこともできる強力なモジュールです。 

エフェクト・サウンドプロセッサー

エフェクト／サウンドプロセッサーはデジタルなど最新のユニークなモジュールが目立つカテゴリーです。特にデジタルテープルーパーやグラニュラー、ディレイなどオーディオをバッファして電圧コントロールと組み合わせるタイプはユーロラックモジュラーの中でも最も充実したカテゴリーです。

Make Noise Bruxa
Alessandro Cortiniとコラボレーションしたフィルターディレイモジュール。
StregaのTime/Filter Experimentセクションをユーロラック化しタッチプレートだったCV出力部分がジャックされました。
セルフパッチによる音作りや他ユーロラックとの連携をよりやりやすくしたディレイモジュールです

Buchla & Tiptop Audio 285t
Buchla system 200のラインナップから再発された、フルアナログのフリーケンシーシフター・バランスモジュレーターモジュール。
入力された音から複雑な音色を作り出す2種類の回路で構成されています。
フリーケンシーシフターはリファレンスOSCを内蔵しておりマニュアル/外部CVの両方でコントロールが可能。アナログフリーケンシーシフターは回路が複雑になりがちなので、嬉しいリリースです！

Knobula Echo Cinematic
モジュレーション用LFOを内蔵したステレオディレイ/リバーブエフェクトモジュール。各パラメーターの操作を記憶できるノブレコーディングも搭載しており動きのあるエフェクトが掛けられます。ディレイ音にはタイプが切り替えられるEQによってディレイ音かフィードバックあるいは両方の音色を変化させることができます。

Qu-bit Electronix Stardust
Qu-bitからの新作は高機能はデジタルテープルーパー。こちらは2025年初の入荷予定ですが、バッファを使ったモジュールに強いQu-bitだけに楽しみな一台です！

モジュレーション・コントロール

モジュレーションソースはすでに様々なタイプがあり、2024年のリリースは比較的落ち着いていました。その中でもSergeからDUSGに電圧プロセッサー部が追加され、"Maths化"したGTSのリリースは話題でした。またRYK Envy Machineにも搭載されたノブレコーディング機能はこれから少しトレンドになりそうな予感です。

Random*Source Serge GTS
Sergeを代表するDual Universal Slope Generatorの発展型モジュール。
DSGからよりレンジの広がったSlopeセクションはオーディオレートでの動作が向上されました。
追加された2つの外部入力とのミックスによりモジュレーションソースとしても一歩踏み込んだCV生成が可能となります。

RYK Modular Envy Machine
パラメーターのノブレコーディングが可能な4チャンネルエンベロープ/LFOモジュール。
チャンネルごとにADSR,AD,LFO,ランダムCV,CVソースの切り替えが可能な多機能なモジュレーションソース。
出力のアッテネートと外部CVのアッテネートができ様々な状況に対応できるモジュールです。

Instruo Dail
TRS/USB MIDIにも対応可能なコンパクトなピッチCVクォンタイザーモジュール。ユーザースケールのクォンタイズだけでなくトランスポーズも可能でスルーリミッター機能も搭載。
付属のエキスパンダーを使えばMIDI鍵盤によるスケール設定も可能。

ALM Busy Mega Milton
小さな機能がまとめられた複合ユーティリティーモジュール。プリアンプ、ユニティーミキサー、アッテネーター、スルーリミッター、ノイズ、S&H,マルチプルが8HPに詰め込まれています。スルーリミッター部分は外部Gateによって有効/無効の切り替えもできます。ユーティリティもAll in Oneタイプが増えてきました。

結論

2024年はユーロラックのモジュールがさらに多様化し、All-in-Oneタイプが目立つ一方でクラシカルなアナログ回路の再設計、発展型等の選択肢も目立った一年でした。自分の音楽スタイルを考えながら、ぜひ自分に合うモジュールをゲットしてください。当店ショールームやフォームからのセットアップ相談もお待ちしています！