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MUSICAL FEATURES

Dual EnvVCAは、低ノイズ設計の指数形VCAを内蔵するアナログファンクションジェネレーターで、パッチングにより LFO, スルーリミッター、VCA、エンベロープジェネレーター、トリガーディレイ、風変りなフィルターやオシレーターとしても動作します。

Dual EnvVCAではEnvVCAにいくつかの機能を加え2チャンネルとなり、ステレオ信号を柔軟に処理することもできるようになります。

  • 多用途のリニア・エンヴェロープ・ジェネレータ/LFO
  • 低ノイズ、低ディストーション、DCカップリングの指数形VCA
  • 完全アナログ
  • スライダーと範囲スイッチでRiseとFall時間を約1.25ミリ秒(800Hz)から2分以上でコントロール
    • 時間範囲を約125μ秒(8kHz)から約10分まで拡張するTime CVジャック
    • RiseFallタイムそれぞれに専用のアテヌバーターを装備
    • 信号の強度と極性を示す青色/赤色のLED
  • Cycleボタンでエンヴェロープをループ(LFO)
  • エンヴェロープを単発で起動するTrigger入力ジャック
  • 両チャンネルのループ状態を切り替えるCycleゲート入力ジャック
  • チェーン接続や連続イベントに使えるEOR/Fゲート出力ジャック
  • VCAのボリュームを変更せずにEnv Outをスケーリング/シフトできるEnv LevelOffsetコントロール
  • オーディオ/CVをVCAに通過させるためのAudio InOutジャック
  • VCA CV入力を使って各VCAをエンヴェロープから独立して使用可能
    • VCA CV
    • にパッチがない場合、VCAのゲインは内部でエンヴェロープ出力に接続済み
  • スルー・リミティング、サスティーン(ASR)、およびユニークなフィルター効果を実現するFollow入力ジャック
  • Re-trigジャンパーの設定により、上昇フェーズ中の再トリガーが可能

HOW TO USE

コントロールと入出力ジャック

CycleボタンとCycleジャック

Cycleボタンを押すことで、各チャンネルのサイクル状態を切り替えることができます。サイクルしている場合、EnvVCAは出力波形が連続して上昇と下降するLFOのように動作します。各ボタンはオレンジ色に照光し、モジュールがサイクルモードであることを示します。なお、すでに上昇中または下降中のエンヴェロープは、このボタン操作によるリセットや変更は実行されません。

Cycleジャックは、両チャンネルのサイクル状態を切り替えます。このボタンがoffの場合、 ゲート信号がボタンをonに設定し、ゲートがハイに保たれている間はチャンネルをサイクル状態にします。 このボタンがonの場合は、ゲート信号がボタンをoffに設定し、ゲートがハイに保たれている間はあらゆるサイクリングを停止します。

Rise/Fallスライダー

RiseFallの各スライダーは、エンヴェロープの上昇および下降時間をコントロールします。スライダーを上に動かすことで上昇および下降部分を遅くし、下に動かすことでそれらを速めます。各スライダーは、エンヴェロープの現在のステージと出力電圧を示す白色のLEDを備えています。エンヴェロープが上昇ステージにあるとき、エンヴェロープが最大値になるまでRiseスライダーのLEDが明るさを増します。ピークに到達すると、Rise の点灯が消えてFallのLEDが点灯し、エンヴェロープが下降するにつれて明るさが暗くなります。

Rise/Fallスイッチ

Rise/Fallスイッチを使って、各スライダーの全体的な範囲を選択できます。スイッチはスライダー毎にあり、Fast, Med, Slowの3つの設定から選ぶことができます。スイッチがFast位置のとき、エンヴェロープはオーディオレートで動作することができるため、古典的なAM、FMやその他の高速なモジュレーション効果に利用できます。中央位置のMedは、典型的な音楽の速度で使用するよう設計されているため、VCAを使って一般的なBPMの音符を作成する際に便利です。 Slowの設定は、遅いLFOなどの緩やかなモジュレーションのために設計されています。

Time CVジャックとRise/Fall CVノブ

Time CVジャックは、エンヴェロープの上昇および下降時間を変調します。 このジャックへの信号はRiseFall、2つのノブを通過します。これら2つのノブはアテヌバーターであり、Time CVジャックへのコントロール電圧がどれくらい上昇または下降時間に作用するのかをコントロールします。 アテヌバーター・ノブを中央から右に回すと、Time CVジャックの正極の電圧がrise/fall時間を伸ばし、負極の電圧はそれらを縮めます。ノブを中央よりも左に回した場合は反対の効果となり、Time CVジャックへの正極の電圧がrise/fall時間を縮め、負極の電圧がそれらの期間を伸ばします。どちらの方向でも、ノブ値が中央位置から遠ざかるほど、着信するCVの効果が強くなります。 ノブが中央位置に設定されている場合、Time CVジャックへの信号はrise/fallパラメータに影響を与えません。各ノブの隣には、モジュレーションの強度と極性を示すLEDがあります。CVによってriseまたはfall時間が伸ばされた場合は青色に、時間が縮められた場合は赤色に変わります。これらの光り方が明るいほど、CVによる効果が強いことを表します。LEDの消灯は、エンヴェロープ時間がTime CVジャックの影響を受けていないことを示します。このジャックにパッチがない場合、これら2つのアテヌバーター・ノブはRiseFall パラメータを微調整するコントロールとして機能します。

Env OutジャックとORジャック、LED

Env Out ABジャックは、対応する各チャンネルのエンヴェロープを出力します。各チャンネルのエンヴェロープのDCオフセットと垂直のスケールは、LevelOffsetの各ノブによって決定されます。ORジャックは、2つのEnv Outの信号を比較し、2つの間で最も高い電圧値を常に出力します。各ジャックの近くにあるLEDは、各エンヴェロープの強度と極性を示します。エンヴェロープが0Vと10Vの間の場合、対応するLEDは青色に光り、エンヴェロープが-10Vと0Vの間の場合は赤色に光ります。各LEDの明るさは出力信号の振幅を表すため、これらが消灯している場合は出力信号が0V付近であることを意味します。

LevelとOffsetノブ

Levelノブは、各Env Outジャックのエンヴェロープ出力に対して減衰と反転(アッテインバート)を実行します。Offsetが中央位置のとき、Levelを最大値に設定することで、約10Vの最大ピークを持つ正極のエンヴェロープが出力されます。Levelノブを中央値から左方向に操作した場合はエンヴェロープが反転され、反時計回りの最大値では出力ピークが-10Vとなります。 Offsetノブを中央位置から右方向に回すと、エンヴェロープに0Vから10Vの正極のオフセットが加わり、反時計回りに回した場合は0Vから-10Vの負極のオフセットが加わります。なお、LevelOffsetの両コントロールはどちらも、内蔵のVCAに接続されるエンヴェロープには影響しません。例えば、オーディオがVCAを通過している状態でEnv Outジャックから外部モジュールのモジュレーション入力にパッチがある場合、LevelOffsetで、オーディオのレベルを変更することなくモジュレーションの量をコントロールすることが可能です。

EORとEOF出力ジャック

EORジャック(End of Rise)ジャックはチャンネルA専用の出力で、上昇ステージが終了し、下降ステージが開始した時にゲート信号を出力します。この信号はエンヴェロープの下降期間中はハイの状態を維持し、エンヴェロープが完了するとローに戻ります。エンヴェロープが動作していない場合、EOR出力はローに留まります。付随するEOR LEDは、出力がハイの状態の時に光ります。EOFジャック(End of Fall)はチャンネルB専用の出力で、下降ステージの終了でハイになり、エンヴェロープが上昇を開始するまでハイの状態を維持するゲート信号を出力します。つまり、このジャックのゲート信号は上昇ステージ期間にのみ、ローの状態になります。付随するEOF LEDは、出力がハイの状態の時にオレンジ色に光ります。

Audio In/Audio OutとVCA CVジャック

Audio InOutジャックは、VCAの入力と出力です。VCA CV入力には、LevelとOffsetを通過する前のエンヴェロープ出力が内部でルーティングされています。エンヴェロープが停止している、または0Vである場合、Outジャックは信号を生成しません。エンヴェロープが上昇するにつれ、出力信号は入力信号がエンヴェロープのピークになるまで大きくなり、エンヴェロープが下降するにつれて無音に向かって小さくなります。Audio In Bは、パネルのラベルが示すとおり、Audio In Aに内部結線されています。したがって、Audio In Bにパッチがない場合はAudio In Aへの信号が両チャンネルに送られます。Audio In Bにパッチすることでこの接続は遮断され、両チャンネルが独立して動作します。VCA CV入力に信号をパッチすると、VCAとエンヴェロープの間の内部接続を遮断し、VCAを独立して使うことができます。VCA CVの入力幅は0Vから5Vで、約-90dB(無音)から0dB(ユニティゲイン)に対応します。

Triggerジャック

Triggerジャックは、最低2Vのトリガーを受信することでエンヴェロープを起動します。すでに進行中のエンヴェロープが存在しない場合、単発のトリガー信号がひとつの完全なエンヴェロープを作成します。トリガーを受信した時にエンヴェロープが上昇中の場合は、このトリガー信号は無効となります(RETRIGジャンパーがインストールされている場合を除く)。トリガーを受信した時にエンヴェロープが下降中の場合は、その時の電圧からエンヴェロープが上昇します。モジュールの背面には、チャンネル毎のRETRIGジャンパーがあります。このジャンパーがインストールされている状態では、エンヴェロープはトリガーを受信する度にいつでも即座に0Vに戻り、上昇を開始します。この設定ではVCA出力にクリックが生じるため、ジャンパーは工場出荷時にはインストールされていません。

Followジャック

Followジャックはスルーリミッターの入力であると同時に、複雑なエンヴェロープの作成や風変わりなオーディオ・フィルタリング、またはエンヴェロープ・フォロワーとしての使用を可能にします。内蔵のエンヴェロープがトリガーされていない、またはサイクルしていない時はいつでも、Follow入力への電圧レベルに適合するようにエンヴェロープ出力が上昇または下降します。しかしながら、上昇と下降の時間はRise/Fallの各スライダーとCVの量に制限されます。つまり、エンベロープ出力はFollowジャックに存在する信号に「追従」しようとしますが、エンベロープがトリガーされた場合に上昇/下降する速度と同じだけしか上昇/下降することができないのです。' スルー 'は変化率であることから、' スルー・リミティング 'と呼ばれます。スルー・リミティングは、FollowおよびTriggerジャックの信号のタイミングを合わせることで、ASRやADSR等の複雑なエンベロープを作成することができます。


RiseとFallの時間幅

なお、各スイッチの設定は、CVを使用して得られる動作レンジに多少の影響を与えることに留意してください。これは外部モジュールによるフルレンジのコントロールを実現する目的で意図的に設計されたものです。

また、本機は完全アナログのモジュールであり、その性質からRiseとFallの最大値と最小値は個体ごとに若干異なります。上の表は基本となる値を示したものです。

各スライダーが同じ位置にある場合でも、上昇と下降の時間は必ずしも同じではありません。これらを正確に同等に設定するには、通常マニュアル操作での調整が必要となります。 CVを適用して、10分を超えるような著しく遅いエンヴェロープを作成する場合、下降時間は上昇時間よりもはるかに遅くすることができます。基本的に上昇時間はおおよそ5分に制限されていますが、下降時間は最大で20分、または個体によっては60分程度まで設定できます。


エンヴェロープの作成

Dual EnvVCAでエンヴェロープを作成するには、Triggerジャック、Cycleボタン、Cycleジャック、またはFollowジャックを使用する、これら4つの方法があります。

Triggerジャックは、トリガー信号が入力されることでエンヴェロープを開始します。このジャックは上昇エッジのみ、つまり電圧が2V以上に上昇した時にのみ応答します。Fig.1は、入力パルスの幅に関係なく同一のエンヴェロープが生成されている様子を示しており、パルス幅および下降エッジが無視されていることが分かります。

RETRIGジャンパーOFFでのトリガー(初期設定)
すでにエンヴェロープが上昇中の時に入力されたトリガーは、RETRIGジャンパーがインストールされていない限り無効となります。トリガーを受信した時にエンヴェロープが下降中の場合は、その時点の電圧からエンヴェロープが上昇します。Fig.2はこれを示しており、エンヴェロープの下降中に発生した5番目と7番目のトリガーによって、下降途中で上昇を開始しています。これ以外のトリガーは、エンヴェロープが上昇中であるために無効、またはエンヴェロープが動作中でないために新規で開始しています。

RETRIGジャンパーONでのトリガー
Fig.3はRETRIGジャンパーによる動作の変化を示したものです。ジャンパーがインストールされている場合、着信トリガーは動作中のエンヴェロープのステージに関係なく、常に0Vにリセットして上昇を開始します。この0Vへの急峻なトランジションは、オーディオで使用した場合にクリックを発生させるため、初期設定ではジャンパーはインストールされていません。

Cycle Button/Jack
Cycleボタンは、エンヴェロープを起動するシンプルな方法のひとつです。このボタンがONの時、エンヴェロープはサイクルを繰り返します。ボタンはラッチ型であり、一度押すと再び押すまでモジュールはエンヴェロープを出力し続けます。エンヴェロープが動作中の時に再度Cycleボタンを押しても、エンヴェロープは即座に停止せず、動作中の下降ステージを完了してから停止します。

Cycleジャックは、ゲートが入力されることで両チャンネルのサイクル状態を切り替えるもので、Cycleボタンと併用して使用します。チャンネルのボタンがOFFの状態の時にジャックにゲートを送った場合、サイクルをONにします。同様にボタンがボタンがONの時にジャックにゲートを送った場合は、サイクルがOFFになります。Cycleボタンは、ボタンおよびジャックの組み合わせによってエンヴェロープがサイクル状態になると点灯します。

Fig.4ではCycleボタンが初期状態でOFF、Cycleジャックへの着信ゲートがハイの期間だけエンヴェロープがサイクルしている様子が示されています。この場合、ゲート信号のパルス幅が広くなるにつれてモジュールが出力するサイクル数も多くなります。

Fig.5は反対の状態を示しており、Cycleボタンが初期状態でONです。この場合は着信ゲート信号がハイの期間中はエンヴェロープのサイクルが停止します。ゲート信号のパルス幅が広くなると、エンヴェロープのグループ間での一時停止期間も長くなります。

また、Fig.5の最初のパルスはエンヴェロープを停止させておらず、Fig.4の3連パルスはエンヴェロープを一つだけしか起動していないことに着目してみてください。これはCycleジャックおよびボタンの状態が、エンヴェロープの停止中(0V)にのみ作用するという、Dua EnvVCAの重要な側面を示しています。動作中のエンヴェロープは、ゲート信号およびボタン操作のあらゆる組み合わせの影響を受けず、エンヴェロープが終了してからCycle ジャックやボタンによるサイクルが可能となります。

Followジャックとゲートを使う
Fig.6はFollowジャックでのゲートの使用法を示したものです。 ゲート信号がハイの期間だけエンヴェロープが上昇し、ゲートがローになるとエンヴェロープは下降します。

Fig.6の4つ目のゲートでは、エンヴェロープが最大値に達した際にゲートが保持された場合、ゲートがリリースされるまでエンヴェロープも保持(ホールド)される様子が示されています。 これはASRエンヴェロープ(Attack Sustain Release)を作成できる、簡単な方法のひとつです。

続く複数パルスの短いバーストでは、Followジャックと連続するゲートだけを使って、複雑なエンヴェロープ形状を作成する方法が示されています。

また、Followジャックは次項のようにゲート以外の信号でも使用することができます。


Followジャックの基礎

Followジャックは、入力された信号に追従するようにエンヴェロープを上昇/下降させます。ジャックに高い電圧(5V)を送ることでエンヴェロープを上昇させ、低い電圧(0V)が送ることで下降させます。これは一つ前のエンヴェロープの作成セクションのFig.6で確認できます。LFO、またはオーディオ信号といった、0Vから5V範囲の電圧を入力した場合、より複雑な効果を得ることができます。

以下は、このジャックを理解する上での基本的な2つのルールです。

  • ルール1: Followジャックへの電圧がエンヴェロープ電圧よりも高い場合はエンヴェロープが上昇し、Followジャックへの電圧がエンヴェロープ電圧よりも低い場合はエンヴェロープが下降します。

つまり、エンヴェロープは常にFollowジャックの信号を取得しようと試み、Followの信号が自身よりも高い場合は上昇、Followの信号が自身よりも低い場合は下降します。これは' follow 'という用語が使われている理由です。

  • ルール2: エンヴェロープは、Rise/FallコントロールとCVが設定する速度でのみ、上昇/下降することができます。

これは、Followジャックの電圧値が突然高くなった場合(例えばゲート信号が入力されるなど)、エンヴェロープはこれに追従して上昇しようと試みますが、コントロールが許可する速度でしか上昇できません。変化率、またはスルーは制限されていることから、フォロー回路は「スルーリミッター」と呼ばれます。

なお、ルール1での' エンヴェロープ電圧 'という用語は、LevelOffsetノブ、およびEnv Outジャックの 出力ドライバに送られる前の内部のエンヴェロープ電圧を指します。内部的なエンヴェロープの振幅は最大5Vと最小0Vであり、これがFollowジャックが0Vから5Vまでの電圧にのみ応答する理由です。Env Outジャックの出力ドライバは、内部の電圧を倍増させるため、5Vの内部エンヴェロープが出力ジャックでは約10Vのエンヴェロープとなります。

これら2つの基本ルールを踏まえた上で、続くセクションではFollowジャックの高度な使い方を紹介します。

サイドチェーン(Envelope Following)
Followジャックを使って、オーディオ信号のエンヴェロープに追従するエンヴェロープを作成できます。このエンヴェロープを反転してVCAのコントロールに使用することで、他のサウンドを' ダッキング 'する効果が得られます。この技術は' サイドチェーン 'と呼ばれます。

代表的な使用方としてキックドラムを使った、例えばバックグラウンドのドローンのような他の音源のダッキングが揚げられます。キックドラムの音源をチャンネルBのFollowジャックにパッチし、Cycleが' off 'になっていることを確認します。スイッチは' Med '、Riseスライダーを下げきり、Fallスライダーを中央位置にして始めます。Levelを上げると、Env Out Bからはキックドラムのエンヴェロープにおおよそで追従するエンヴェロープが出力されます。RiseFallを調整することで、エンヴェロープのアタックとリリース時間、つまりエンヴェロープがキックドラムのアタックとリリースに応答する速度をそれぞれコントロールすることができます。

この例では、エンヴェロープの反転が必要になるため、Levelを反時計回りに絞り切り、Offsetを2:00程度の値に設定します。これにより、Env Out Bは約5Vに留まる、キックドラムの再生でダッキングする反転エンヴェロープを出力します。この反転エンヴェロープをチャンネルAのVCA CVジャックにパッチします。例えばドローン・サウンドのような、ダッキングの対象となるオーディオをチャンネルAのAudio Inに接続し、Audio Outをモニターします。ドローンの音量が、キックドラムの再生されるタイミングで下がることが確認できます。ドローンとキックドラムを同時に聴くことで、完全な効果を確認できます。

チャンネルBのRiseFallスライダーそれぞれ調整することで、エンヴェロープが応答する速度をコントロールできます。スライダーの設定値が速すぎる場合、エンヴェロープはエンヴェロープ全体ではなくサウンド波形の個々のピークをトレースすることになるため、緻密なAM効果のような結果となります。スライダーの設定値が遅すぎる場合は、キックドラムが再生された際の音量変化が少なくなります。

また、チャンネルBのOffsetLevelノブを調整することで、ダッキングのダイナミクス・レンジをコントロールすることもできます。ダッキングの量を減らしたい場合は、Levelノブを中央に向けて操作することでエンヴェロープの振幅を減少させます。反対にキックドラムが小さく感じる場合、Levelノブを反時計回りの極端な位置に設定することで、必要なダッキング効果を得るために十分な振幅のエンヴェロープを生成することができます。Offsetは、大抵の場合で1:00から3:00の間程度に設定すると良いでしょう。低すぎる場合は出力が小さくなりすぎ、高すぎる場合の出力は、ダッキングがほとんどない最大ボリュームとなります。

オーディオ・フィルター
Followジャックは、スルー・リミティングの特性を生かした風変わりなローパス・フィルターとして使うこともできます。はじめに、使用するオーディオ信号を0Vから5Vの範囲内になるように調整します。一般的には、レベル・シフターを使って必要なDCオフセットを加え、アッテネータ等でオーディオが5Vを超えないように減衰します。この範囲外の信号はすべてクリップされるため、激しいディストーションが生じます。

この調整されたオーディオをFollowジャックにパッチし、Env Outジャックを任意のミキサーやアンプにパッチします。 Levelを最大に、Offsetを中央位置に設定します。Rise/Fallスライダーとスイッチを最も速い位置に設定して始めます。一定な正極の電圧をTime CVジャックに送り、Rise CVFall CVノブを最小値に設定します。この時点で、元の信号に近いオーディオ信号を聴くことができるはずです。Rise/Fall CVノブとスライダーを調整するか、またはTime CVジャックにパッチされたCVを調整してRiseとFallの時間を遅くすることで、スルーが制限されて高周波が通過できなくなり、オーディオにフィルタリング効果が加わります。より風変わりなサウンドを作成するには、RiseかFallのどちらかのみを調整してみてください。高周波の上昇部分と下降部分の通過の仕方が変わり、独特な倍音を作成できます。

 

ウェーブ・シェイパー
スルーを制限することで、鋭いトランジションを持つ波形のトランジションを滑らかに変更することができます。例えば、Followジャックに矩形波を入力した場合、Env Outジャックは台形または三角形のような波形を生成します。Rise/Fallスライダーとスイッチを調整することで、任意のウェーブ・シェイピング量を保ったままで最大の振幅で出力波形を得ることができます。これらのコントロールは、波形の周波数が変化した場合、再び調整する必要があります。Time CVジャックとRise/Fall CVノブを使って周波数をトラッキングすることで、ある程度一貫性のある可変周波数ウェーブ・シェイパーを作成できます。

ポルタメント/グライド
CV/GATEキーボードやシーケンサーの出力は主に、音符が演奏されるたびに、ある電圧値から次の電圧値に変わる' ステップ '形の波形です。この電圧をVCOにパッチした場合の結果は、ある音階から次の音階に変わる、音符のシーケンスとなります。音符に適量のスルーを加えることで、ある音程から次の音程への' グライド 'を作成します。この効果は' ポルタメント 'または' グリッサンド 'として知られています。Dual EnvVCAでは、このステップ状の波形をFollowジャックにパッチし、Env Outジャックから出力を取ることで、この効果を実行できます。グライド効果の量は、RiseとFallの時間でコントロールします。VCOのピッチ入力にパッチした場合は、LevelOffsetの各ノブでチューニングを調整できます。 なお、Dual EnvVCAは精密なポルタメント効果のために設計されたモジュールではないため、広範囲での正確なチューニングは保証されません。


ASR/ADSRエンヴェロープの作成

ASRエンヴェロープ
ASRエンヴェロープは、上昇スロープ(アタック)、フラットな高値維持部分(サスティン)、下降スロープ(リリース)を持つ台形のエンヴェロープです。このサスティン・ステージの長さは、Fig7.のように入力ゲートのハイの状態の長さに応じて変化します。これはTriggerジャックへのパッチやCycleボタンを使用して三角形のエンヴェロープを生成するAR(アタック-リリース)エンヴェロープと対照的なものです。

Dual EnvVCAのチャンネルの一方を使って可変幅の矩形波を生成し、他方でASRエンヴェロープを作成できます。チャンネルBのCycleをonにしてサイクルさせ、マルチプルまたはスタック・ケーブルを使ってEOF出力をチャンネルAのFollowジャックとTriggerジャックにパッチします。オーディオ音源をAudio Inジャックにパッチし、Audio Outジャックをモニターします。

チャンネルAのCycleがoffになっていることを確認し、4つのRise/Fallスイッチをすべて' Med 'に設定します。チャンネルAのスライダーがチャンネルBよりも低く(速く)なるよう、各スライダーを調整します。チャンネルBのRiseFallを調整することで全体のテンポを、Riseスライダー単体ではサスティン・ステージの長さをコントロールすることができます。また、チャンネルBのEOFジャックの代わりにキーボードを使うこともできます。キーボードのゲート出力をチャンネルAのTriggerFollowジャックにそれぞれパッチします。鍵盤を素早く弾くとスタッカート、鍵盤を長く押さえると長い音符を演奏できます。なお、音符の長さの最小値(最短値)は、入力ゲートの短さに関係なく、常にチャンネルAのRiseとFallパラメータによって決定されます。EOFジャックやキーボードの他にも、ゲート長(パルス幅)コントロールを備えるシーケンサーのゲート出力を使うことも可能です。特定の音符のゲート長を長く設定することで、シーケンス内でそれらを強調/アクセントすることができます。お手持ちのシーケンサーにパルス幅のコントロールがない場合は、チャンネルBのTriggerジャックにパッチし、Cycleボタンをoffにします。

このパッチは、ゲート信号をTriggerFollowの両ジャックにパッチすることで機能します。Triggerジャックは、ゲート幅が極端に短い場合でも完全なエンヴェロープが出力されることを保証し、Followジャックがサスティンを生成します。ゲート信号をTriggerジャックだけにパッチした場合は、ピークに到達した時点でエンヴェロープが下降を開始するため、サスティンを得ることができません。Followジャックへのゲートがハイ状態の時にエンヴェロープもハイを保持することで、エンヴェロープのサスティン部分が作成されます。 反対にFollowジャックにだけパッチした場合では、幅の短いゲート入力はRiseパラメータが非常に速い場合にのみ完全なエンヴェロープを作成することとなります。Rise時間よりも短いゲートは、前セクションのFig.6のようにピークに達しないエンヴェロープになります。ゲートをTriggerFollowの両ジャックにパッチすることで、Fig.7のように設定に関係なく完全なエンヴェロープを得ることができます。パルスの幅と、エンベロープ出力のサスティンにどのような関係があるかに着目してみてください。1つ目のパルスの幅は、エンヴェロープが上昇する時間よりも短く、サスティンを生成するのに十分でないことがわかります。


ADSRエンヴェロープ
ADSRは、アタック・ステージの後に' ディケイ 'ステージが追加された4ステージのエンヴェロープです。ADSRエンヴェロープはピークに達した後、ピークレベルよりも低いサスティン・レベルまで減衰します。Fig.8は、このサスティン・レベル、およびエンヴェロープが減衰する速度がコントロール可能であることを示しています。

Dual EnvVCAでは、ゲート信号をFollowジャックに送ることでADSRエンヴェロープを生成することができます。使用するゲートは、パルス幅のコントロールが可能なキーボードやシーケンサー等の外部モジュールで生成すると良いでしょう。このパルス幅がサスティンの長さを決定します。つまり、ADSRエンヴェロープはアタックとディケイの各セグメントを実行し、ゲートがローになるまでサスティン・レベルを保持します。また、その時点でリリースのセグメントが実行されます。

マルチプルまたはスタックケーブルを使って、ゲート信号をチャンネルAのTriggerジャックとチャンネルBのFollowジャックにパッチします(上のイメージではTime CVにもパッチされていますが、この時点では無視して構いません)。Env Out BをチャンネルAのFollowジャックにパッチします。両チャンネルのCycleボタンをoffにします。 ADSRエンヴェロープはチャンネルAのEnv Outジャックから出力されます。オーディオを使用するにはチャンネルAのAudio In/Outジャックを利用します。

チャンネルAのスイッチをMedに設定し、2つのスライダーをFast.よりも2つか3つ上の目盛りに合わせます。Riseはアタック時間を、Fallはリリースとディケイ時間の両方をそれぞれコントロールします。チャンネルBは、基本的にEnv Outジャックからの入力ゲートを通過させる、高速なRise/Fall時間を持つフォロワーとして構成されています。 ゲート出力の振幅は、Levelノブでコントロールすることができます。続いて、この可変振幅ゲートをチャンネルAのFollowに送ります。後述のように、この振幅がサスティン・レベルを設定します。なお、Levelノブは繊細に反応するため、このパッチは12:00から3:00間の設定でのみ機能します。

ゲートを送ることで、Fig.8のようにエンヴェロープを生成します。このゲートはTriggerジャックにパッチされているため、ゲートの上昇エッジがチャンネルAをトリガーします。これによりエンヴェロープをピークまで上昇させ、ディケイ・ステージへの下降を開始させます。チャンネルAのFollowジャックのレベルに達すると、サスティン・セグメントの間は保持されます。FollowジャックのレベルはチャンネルBのLevelノブによりコントロールされることから、Levelノブがサスティン・レベルをコントロールします。Followジャックのゲートがローになると、エンヴェロープはリリース・ステージの間、チャンネルAのFallスライダーとスイッチが定義する速度でゼロに戻ります。

この時点で、アタックまたはRise速度(Riseスライダー/スイッチ)、サスティンの長さ(ゲートのパルス幅)、およびサスティン・レベル(Levelノブ)をコントロールが可能となりました。しかしながら、ディケイ時間とリリース時間は常にFallスライダー/スイッチが設定する値となります。

これを真のADSRエンヴェロープにするには、キーボードまたはシーケンサーのゲート出力からマルチプル等で分岐したケーブルをTime CV入力にパッチします。この時、キーボードまたはシーケンサーのゲート出力はチャンネルAのTriggerとチャンネルBのFollowに接続された状態のままであることを確認します。これにより、Fall CVノブでリリース時間に対するディケイ時間を設定が可能になります。中央よりも左に回すとディケイ時間はリリース時間よりも速くなり、右に回すとその反対になります。この動作は、ディケイ・ステージはゲートがハイの時に発生し、リリース・ステージはゲートがローの時に発生するためです。ゲートはTime CVジャックにパッチされているため、Fall CVノブの位置設定が作用するのはゲート=ハイの間、つまりディケイ・ステージのみとなります。また、Fallスライダーまたはスイッチを調整した場合は、ディケイとリリース時間の両方が変更されます。

古典的ではないエンヴェロープ形状を作成するには、チャンネルBのスイッチをMedに設定し、各スライダーでRiseFallの時間を遅めるように調整します。


OffsetとLevelノブ

LevelOffsetの各ノブは、Env Outジャックからの出力信号の振幅DCレベルをそれぞれコントロールします。これらは、Env OutをVCA CVにパッチしない限りはVCAまたはオーディオ信号に影響を与えません。VCAから独立しているため、Env Outで任意のものをモジュレートし、VCAを妨害することなくLevelOffsetを使ってこのモジュレーションを制御することができます。

Levelノブは、エンヴェロープの振幅をコントロールします。ノブが中央位置の場合、エンヴェロープは出力されません。ノブを中央よりも右に回すと、エンヴェロープ電圧が上向きに上昇して下向きに下降する、エンヴェロープの設定として最も一般的な結果が得られます。ノブを中央よりも左に回した場合はエンヴェロープが反転され、下向きに上昇し、上向きに下降します。どちらの方向でも、ノブ値が中央から遠ざかるほど振幅が大きくなり、最大値は約10Vとなります。

Offsetノブは、エンヴェロープ出力を上下にシフトします。ノブが中央位置の時、エンヴェロープは0Vで静止し、そこからLevelノブが設定する電圧値まで上昇します(+10Vや-10Vなど)。Offsetノブを中央よりも左に回すと、エンヴェロープは負極の電圧で静止します。反時計回りの最大値での静止地点は-10Vとなります。反対に、中央位置よりも右に回した場合はエンヴェロープは+10Vが最大値の正極の電圧で静止します。

Env Outジャックは、約-10Vと+10Vでクリップします。LevelOffsetをそれぞれ極端な設定にすることで簡単にクリッピングが生じて-10Vまたは+10Vの安定した出力を得られます(通常、パッチにおいてあまり興味深いものではありません)。LevelOffsetをどの程度に設定したらよいか決めかねる場合は、Offsetを中央位置に、Levelをおおよそ3:00程度、またはそれ以上の値で始めると良いでしょう。


RETRIGジャンパー

モジュール背面にあるRETRIGジャンパーは、すでにエンヴェロープが動作中にトリガーを受けた際のDual EnvVCAの挙動を変更します。工場出荷時にはジャンパーはインストールされておらず、この状態の場合、エンヴェロープが上昇中に受けたトリガーは無視され、エンヴェロープが下降中にトリガーを受けた場合は、その時点の電圧から再び上昇します。
ジャンパーがインストールされている場合、Dual EnvVCAはエンヴェロープの上昇中/下降中に関係なく、トリガーを受信すると即座にエンヴェロープを再開します。この場合、エンヴェロープは即座に0Vまで下降し、続いて上昇します。この0Vへの鋭いトランジションは、オーディオVCAセクションと使用した場合にクリックを発生させます。

VCA 最小ゲイン・トリム

モジュール背面には、VCAゲインの最小値を調整するトリムポットがあります。これは通常、エンヴェロープが動作していない時にオーディオが漏れないように設定するものですが、最小ゲインの値を低く設定しすぎた場合はDual EnvVCAがサイクル時に音符間の隔たりが大きくなることになります。つまり、エンヴェロープのピーク間の時間が長くなり、サウンドが聞こえないか、ほとんど聞こえなくなります。

トリムポットを完全に反時計回りの最小値に設定した場合、エンヴェロープがサイクルしていない際のVCAの減衰は-90dBとなります。これはサイクル時の音符間の無音部分の最大値であり、音漏れの最小値です。初期設定である中間位置の設定の減衰は-80dBです。この場合はエンヴェロープのサイクル間の無音部分は短くなり、音漏れも少量です。トリムポットを時計回りの最大値に設定した場合、エンヴェロープ停止時の減衰は-30dBとなります。この設定はサイクル間の無音部分を少なくしたい時や、非サイクル時に多少のオーディオ漏れがあっても気にしない場合などに便利です。

 

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