モジュラーシンセを始めよう 2025〜セットアップ編
前の記事では、"仕組み編"としてモジュラーシンセとCVの仕組みについて説明しました。今回の"セットアップ編"では、具体的なセットの組み方と、色々な目的に応じたモジュラーセットアップをご紹介していきます!
モジュラーシンセのセットアップ
必要なもの
自分だけのモジュラーシンセをセットアップするには、次の4つを揃えてください。
モジュール
モジュラーシンセは買って触ってからわかることも多いので、セットアップの想定が完全に決まっていても、一度に全部買うのではなく最初に3つくらい購入し、色々と理解した上で追加していくとモジュールをうまく選べるでしょう。Clockfaceでもショールームで直接、あるいはメールでもセットアップのご相談を受け付けているので、気軽にお問い合わせください!
ケーブル
パッチケーブルや音を最終出力するためのケーブルが必要です。
モジュール同士をパッチングするケーブルは3.5mmモノラルミニフォンプラグのものが一般的ですが、一部のミキサーモジュールなどでステレオミニフォンプラグを採用している場合もあります。アウトプットモジュールの最終出力をミキサーやオーディオインターフェースへ接続するケーブルはフォンプラグ(6.3mm)やキャノン端子等モデルによって異なるので使用するモジュールと環境に適したプラグ形状のケーブルを用意しましょう。通常のパッチケーブルであればALM Busy Patch Cable Packsがバリエーション豊富で発色も良くおすすめです。
※スタックケーブルについて
スタック可能なタイプのケーブルでは同じモジュレーション信号やクロック信号を複数の先へ送ることができます。Tiptop Stackcable(カラー版 / 白版)やTendrils Stakkasがこのタイプになります。
ケース
ミキサーやユーティリティの追加の必要が出てきたりするので、当初予定しているセットアップより大きめのサイズのものがおすすめです。当店で販売しているケースは電源つきのものがほとんどです。電源を入れる際はモジュールを固定しないと基板同士が接触し不慮のショートでダメージを与えてしまう可能性があるので、モジュールは必ずネジでケースに固定した状態で使用しましょう。
電源
電源つきケースの場合は不要です。各モジュールへ分配する電気を作ります。ケース内のバスボード(Intellijel TPS80W)や小型のモジュール(4ms Row Power)として提供されています。
セットアップ時の注意点
モジュラーシンセを使うには、モジュラーのケース内の電源に個々のモジュールをリボンケーブルで接続し、ネジ留めしていきます。

モジュールの並べ方はお好みで良いですが、以下では大体左から右へ信号が流れるようにセットしています。モジュラーではパーツ(モジュール)を個別に電源に接続するため、以下のような注意点を必ずお守りください
- -12V(赤ストライプ)を合わせて接続する: 電源側、モジュール側、それらをつなぐリボンケーブル上で-12Vがどちら側になるか印がついているので、それが合うように接続してください
- 許容量は余裕を持って守る: 電源にもよりますが、目安として許容量の7割程度まできたら注意してください。
- 電源に接続し、正しい位置に配置してから電源を入れる: 電源が入っている状態でモジュールを接続するのはおやめください。
- 電源以外のピンに要注意: モジュールの基板上には、電源ピン以外にも他のモジュールと繋げたり、内部のファームウェアのプログラミングの為のピンなどが出ていることがあります。これらのピンとバスボードの電源ピンなどが接触すると故障の原因になりかねません。電源以外のピンの接触に気をつけて下さい。
- ケーブルのダメージに要注意: リボンケーブルやフライングバスボードの被膜が剥げてきたりするとショートなどの原因になります。被膜が少しでも剥げてきたら交換してください。
- 基板を手で触らない: 人間の手も電気を通します。また静電気などが回路を壊す可能性もありますので、基板を手で触らないようにしましょう。
- モジュールを嵌めていないスペースへのケーブルの落ち込みに注意: ケースをモジュールで完全に埋めていない場合、空いているスペースからケーブルが落ち込み、内部のバスボードをショートさせてしまう可能性があります。空いているスペースはブランクパネルなどで埋めてしまう方が安全です。ブランクパネルを買うのが勿体ない人は下敷きなど、簡易的なものを使っても良いでしょう
これらの注意点については、過去記事「モジュラーシンセ電源の基本」詳しく買いてありますので、そちらも是非お読みください。
Modulargridの勧め
modulargrid.netでは市販されているほとんど全てのモジュールが登録され、仮想的なラックにセットアップすることができます。自分のセットの設計にも使えるほか、モジュールの消費電流の許容量なども計算してくれるので、電源が足りるかどうかの目安の計算も行ってくれます。普通サイズのラックのプランニングであれば無料アカウントでも十分使えるので、ぜひ登録して利用してみてください
VCO/VCF/VCAで構成されたシンセボイス+エフェクトセット
シンセサイザーの基本VCO,VCF,VCAとエンベロープ,エフェクターで構成されたCV/Gateで鳴らすシンプルなシステムです。

38HP +12V:335mA -12V:200mA +5V:0mA Depth 40mm
- ALM Busy Pip Slope mk II (エンベロープ)
- Joranalogue Cycle5 (オシレーター)
- Hikari Instruments Ping Filter (フィルター)
- ALM Busy Tangle Quartet (VCA)
-
Michigan Synth Works Monsoon (グラニュラーエフェクト)
パッチング例
オーディオのパッチングはCycle 5のアウトをPing Filterのオーディオインへ繋ぎLowpassアウトをVCAのTangle Quartetのシグナルインに繋いで出力をエフェクトのMonsoonに入力するたった3本で完成します。エンベロープのPip Slope mkIIの出力はTangle QuartetのCVインに繋ぐだけでもいいですがそれだけだと味気ないのでStackcableやマルチプルを使ってエンベロープを分岐してPing FilterのFMインに繋ぐとよりシンセらしい音作りができます。モジュール以外のパッチングはCV/Gateの出力を持つシーケンサー等からのCVをCycle 5のv/octに、GateをPip Slope mkIIのTrigに接続するだけです。エフェクトにはMutable Cloudsの発展系クローンのグラニュラーエフェクターMonsoonを使いリアルタイムグラニュラー処理やリバーブとして活躍します。

MIDI対応シンセボイス+エフェクトセット
MIDI to CVコンバーターのmmMIDIはMIDIノートをCV/Gateに変換しベロシティーもCVにしてくれるので音程と発音以外のコントロールもパッチングによって可能にします。マルチエフェクターのMFXはエコーやリバーブだけでなくディストーションやフェイザー、コーラス等様々なエフェクトアルゴリズムを搭載しておりMCO mkIIと組み合わせれば100種類以上の音色を作り出す事ができます。

16HP +12V:150mA -12V:45mA +5V:0mA Depth 32mm
- ALM Busy mmMidi (MIDI to CV)
- ALM Busy MCO MkII (シンセボイス)
- ALM Busy MFX (マルチエフェクト)
パッチング例

グリッチセット
QCDのクロックをミックスし、レゾネーターのNight RiderでパーカッシブなPinging音を鳴らすシステムです。

62HP +12V:319mA -12V:134mA +5V:41mA Depth 28mm
- 4ms Quad Clock Distributor ( QCD )(クロック)
- Hikari Instruments Atten/Mixer (アッテネーター)
- RYK Modular Night Rider (レゾネーター)
- Qu-bit Electronix Data Bender (グリッチエフェクト)
- Qu-bit Electronix Nautilus (ディレイ)
パッチング例
QCDから異なる速さのクロックを3つAtten/MixerでミックスしレゾネーターのNight RiderでパーカッシブなPinging音を鳴らすシステムです。さらにData BenderのグリッチエフェクトとNautilusのディレイエフェクトを掛けて不規則な発音を強調できます。QCDのTapクロックを使ってNight Riderのシーケンサーを走らせ進行方向の設定で周期的なフレーズやランダムな動きを切り替える事ができ、4つ目のクロックアウトをモジュレーションソースとして使って面白い変化をするポイントを探しましょう!

フィードバックノイズセット
2種類のウェーブフォルダーを持つBifoldでセルフ・フィードバック・パッチをしてFlurryのS&HランダムCVでフィードバック量のコントロールとアルゴリズムNoiseをオーディオとして入力しより過激な音を作り出す事ができるシンプルな2モジュールシステムです。フィードバックから生まれる発振音はわずかな操作でダイナミックに変化するのでノブの操作による音の変化を楽しむ事ができます。

16HP +12V:210mA -12V:124mA +5V:0mA Depth 38mm
- Intellijel Designs Flurry (ランダム/ノイズ)
- Intellijel Designs Bifold (ウェーブフォルダー)
パッチング例

オールインワンアンビエントセット
音源とエフェクトが一つにまとまったアンビエントモジュールOneiroiを10個の出力を持つコントローラーBlack Joystick2で自由に操作して幻想的なサウンドを無限に作り出すシステムです。

42HP +12V:271mA -12V:80mA +5V:0mA Depth 30mm
- Erica Synths Black Joystick 2(コントローラー)
- Befaco Oneiroi(音源+エフェクト)
パッチング例
Oneiroは自身の音をルーパーに録り続けるサウンド・オン・サウンド状態にしジョイスティック操作のCVで各パラメーターをコントロールするだけでなくBlack Joystick2のLFOやGateを駆使すれば変化し続けるドローンサウンドが生み出されます。

クォンタイザーを使った即興でのメロディ構築セット
クォンタイザーを使ってメロディを自動生成するシーケンスシステムと音源+エフェクトのセットです。

52HP +12V:346mA -12V:27mA +5V:0mA Depth 39mm
- Instruo Gloc (クロック)
- Intellijel Designs Scales (クォンタイザー)
- RYK Modular Envy Machine (エンベロープ)
- Michigan Synth Works Beehive (シンセボイス)
- Intellijel Designs Sealegs (ディレイ+リバーブ)
パッチング例
ピッチCVクォンタイザーScalesのCVインにEnvy Machineのサイクルさせたチャンネルを入力しGlocのクロックでCVのホールドと発音をさせるスケールに寄せたフレーズを生成するシステムです。音源にはMutable PlaitsクローンのBeehiveとリバーブも掛けられるディレイSeelegsを使い広がりのあるバリエーション豊かな音作りが可能です。Envy Machineのチャンネルの一つをエンベロープとして使いBeehiveのLevelをコントロールすればアタックの遅い音にすることもできます。glocはディバイド/マルチプライだけでなくランダムクロックとしても動作するのでテンポに同期したランダムな発音が楽しめます。

ウエストコーストセット
Tiptop Buchlaの4モジュールを組み合わせたウエストコーストシステムです。

96HP +12V:567mA -12V:226mA +5V:0mA Depth 45mm
- Buchla & Tiptop Audio Quad Function Generator 281t (エンベロープ)
- Buchla & Tiptop Audio 264t Quad Sample and Hold / Polyphonic Adapter (サンプル&ホールド)
- Buchla & Tiptop Audio 259t Programmable Complex Waveform Generator(オシレーター)
- Buchla & Tiptop Audio Quad Lopass Gate Model 292t (VCA)
パッチング例
コンプレックスオシレーターの259tとローパスゲートの292を音源部としクアッドファンクションジェネレーターの281tとS&Hの264tで音階と発音をコントロールします。Tiptopの新規格Artを使って12音階でランダムな2つのメロディを鳴らしノブの操作でFMやウェーブフォールドを操作して倍音豊かなオーガニックサウンドを楽しめます。




