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VCAと仲良くなろう!

究極のアーミーナイフモジュールを掘り下げる

今回のWaveguideブログではVCAを利用した様々なパッチを紹介していきます!

皆さんはVCAモジュールをいくつお持ちですか?最近は1つのモジュールで単体シンセにもなるようなデジタルオシレーターもたくさんあるので、ひょっとしたらVCAを持っていない!という方もいるかもしれません。しかしVCAの本来の機能である、「信号の出力レベルを電圧コントロールする」役割を使うと、様々なパッチングに使うことができます。英語では"You can never ever have enough VCA's" (VCAは何個あってもOK!)というモジュラー格言?があるように、VCAは様々な用途で使える"アーミーナイフモジュール"なのです。

 

VCAの構成要素

入出力ジャック

モジュラービギナーの方から「VCA がよくわからない」「エンベロープとの違いがわからない」という声をいただくことがありますが、それは多分、VCAが出力は1つですが、「シグナル入力」「CV入力」という2種類の入力を持つことも理由の一つでしょう。同じように2種類の入力があるので分かりづらいモジュールの例としてはサンプル&ホールドがあります。

VCAでは、「シグナル入力」にパッチされた信号を、ノブおよび「CV入力」へパッチされた電圧で大きさを変えて出力します。基本的なパッチではシグナル入力にはオーディオを、CV入力にはCVをパッチしますが、オーディオをCV入力に、CVをオーディオの信号に入れることもあります。ですが便宜上、このブログでは増幅される信号の入力を「シグナル入力」、増幅率をコントロールする信号の入力を「CV入力」と呼びます。

レベルノブ、アッテネータ、コンボノブ

ノブ系の操作子はどうでしょうか。搭載されている頻度が高いのはアッテネータオフセットノブで、それぞれ次の機能を持ちます。

  • アッテネータ: CV入力への電圧をアッテネートするノブ
  • オフセット: 入力CVが0Vの時の出力シグナルレベルをコントロールするノブ。CVが入力されていない場合、オフセットを0にすると出力レベルは0、オフセットを上げると出力レベルが上がっていくので、音量のマニュアルコントロール用ノブとして機能します。

では、オフセットノブのないVCAの場合、CVをパッチしないと出力レベルがコントロールできないのでしょうか。実はそんなことはなく、オフセット専用ノブのない多くのVCAでは、CV入力にパッチされていない場合、5V等の一定電圧が内部的にCV入力に供給され、アッテネータによって出力レベルをマニュアルでコントロールできます。パッチングにより機能が切り替わるノブなので、コンボノブなどと呼ばれることもあります。ただしCV入力にパッチされている場合は5Vの供給がなくなるので、CVのみでコントロールする必要があるので、CVとノブの両方で同時に音量を操作したい場合は独立したオフセットノブがついたものを選んでください。

その他VCAによっては入力されるCVへのレスポンスを変えるようなコントロールノブがついていることも多いです。こちらはエンベロープ側にカーブ調整がついていない場合などに特に重宝するでしょう。

VCAはVoltage Controlled "Attenuator"?

入出力以外にも、もう一つVCAが分かりづらい理由として、VCAの正式名称であるVoltage Controlled Amplifierに引っ張られ、「信号を増幅する機能」が第一であるという印象を持つ人が多いことも挙げられます。信号の増幅もVCAモジュールによっては可能ですが、VCAには増幅率の上限は1倍(ユニティゲイン)というようなものもあります。モジュラーにおけるVCAの機能はゲインを上げることではなく、「出力信号のレベルを電圧コントロールする」のが一番の役割です。Amplifierでなく、信号を減衰させる方向にしか動作しないものでも、減衰量を電圧コントロールできればVCAです。なので、VCAは"Voltage Controlled Attenuator"と解釈する方が実情に合っているでしょう。

マイナスのCVを入れると?

(少し発展的な内容です) VCAにマイナスのCVを入力するとどうなるでしょうか?オフセットが0ではなく、CV=0で音が出ている状態の場合は、出力音量がゼロになるまではマイナスのCVを入れて音量を下げる効果を得られます(Patch5. Duckingを参照)。しかし音量が0になった時点でそれ以上のマイナス電圧は何も影響を与えません。この効果を逆手に取ったのが後述のPatch 7. Half Wave Rectifierパッチです。

実は、オフセットが0でマイナスのCVを入れても反応するようなVCAに似たモジュールがあります。それがリングモジュレーター/クアドラントマルチプライヤーで、この場合CVとオフセットが合わせてマイナスになると、波形が上下反転します。つまり、シグナル入力への電圧とCV入力への電圧とで符号まで含めて掛け算を行う働きをします。これはアッテネータではなく、アッテヌバータの働きに電圧コントロールを加えたようなものなので、普通のVCAを"Voltage Controlled Attenuator"と呼ぶなら、リングモジュレーターは"Voltage Controlled Attenuverter"と呼べるでしょう。リングモジュレーターでやるように、VCAで2つの入力両方にオーディオを入れる場合はAmplitude Modulationと呼ばれます(Patch 10)。

 

お勧めのVCAモジュール

VCAについておさらいをしたところで、Clockfaceでのお勧めVCAモジュールをご紹介!多チャンネルのもの、音にこだわりありのものなどタイプ別に集めてみました。

多チャンネルVCA

4CHまたは6CHのVCAです。システムのVCAの数に余裕を持たせると、色々なパッチを試せます。Intellijel Quad VCAは機能性も高く、オフセットやレスポンスコントロールに加えBoostスイッチが便利。ALM Busy Tangle Quartetは逆にシンプルなコントロールながらコンパクトです。ミックス機能がついているのも特徴です。
  • Intellijel Designs Quad VCA

    ¥35,900 (税抜 ¥32,636)
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    充実した機能と高品質を兼ね備えた4CH VCAミキサー

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  • ALM sibuk Tangle Quartet

    ¥33,900 (税抜 ¥30,818)
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  • Erica Synths Black Quad VCA2

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    レスポンスが切り替え可能な4CHのVCAミキサー

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    MUSICAL FEATURES Befaco HexMix VCAは、コンパクトな6チャンネルのVCAミキサーです。全チャンネルに独立した応答曲線コントロールとCV入力、マニュアル・ゲインコントロールを装備する本機は、各チャンネル出力からチャンネル6へのノーマライズにより6チャンネルのミキサ...

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歪みにこだわりありのVCA

シンセボイスの最終段を構成するVCAは音質への影響も大きく、より音に暖かみを加えたい場合は歪みを積極的に導入したVCAの使用もお勧めです。L-1のように真空管を用いたVCAもあります。Verbos Amp&Toneはフィルターもつき、2つ合わせてシンセボイスの後段を構成可能です。
  • Xiaoli

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    こだわりの音質と機能をもった、コンパクトなオーバードライブ付きVCA

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    FITUR MUSIK Sebuah modul VCA terdiri dari sirkuit diskrit Manhattan analog. BersihVcaTidak seperti, ini adalah suara vintage dan secara agresif di...

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  • L-1 Tube VCA1 (1Ж24Б)

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  • Verbos elektronik amp & Tone (2020 Ver)

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    トランジスターベースでコンパクトになったディスクリートVCF+VCA

    FITUR MUSIK Amp & amp & Tone adalah verbos Electronics ' modul VCF + VCA baru yang terdiri dari sirkuit diskrit. VcA adalah berbasis transistor...

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ローパスゲート

Buchlaで使われているVCA、ローパスゲートはCVコントロールに入れた電圧の通りに音量変化するのではなく、緩いディケイを必ず伴います。その為エンベロープでなくゲートなどをCVに使用しても自然な鳴り方をします。音の明るさも音量に伴って変化する為、よりより生々しい音色を生み出せます。Erica Synth Black LPGはレゾナンスつき、Passive LPG 1Uはパッシブで動作可能です。
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    ¥35,900 (税抜 ¥32,636)
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  • Intellijel Designs Passive LPG 1U

    ¥7,900 (税抜 ¥7,182)
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VCAを用いたパッチ例

ここまででもいくつか触れましたが、次からは11のパッチングを通して具体的にVCAの様々な使い方を紹介します。

VCA Patch1. VC Attenuator

こちらはVoltage Controlled Attenuatorとしての様子を写したパッチです。動画中のQuad VCAはBoostスイッチOFF、レスポンスカーブもリニアなので入力信号はノブ位置最大でちょうど1倍程度です。 この動画の前半では手動でコントロールするアッテネータとしての動作を示し、後半でCV入力にQuadrattからの電圧をパッチし、アッテネート量を電圧でコントロールしています。

 

VCA Patch2. Envelope-Controlled VCA

VCAの一番「普通の」使い方です。VCAのCV入力にエンベロープ電圧を入力することで、出力信号の音量が0から増え、ピークに到達して0まで消えていきます。これがシンセサイザーの発音の基本的な仕組みです。音量変化は入力される電圧でコントロールされるので、エンベロープのアタックやディケイ時間で音量変化の時間が決まります。

 

VCA Patch3. Panning

さて、ここからが応用編になります。一つ目は、二つのVCAをステレオ出力として使用したパンニングパッチです(ステレオ環境で試聴してください)。オシレーターからの出力を二つのVCAのシグナル入力に接続しアウト1を左へ、アウト2を右へ出力しています。そしてバイポーラーのLFOをチャンネル1のVCAのCV入力に接続すると、LFOの出力がプラスの時にだけ音が鳴ります。次にLFOの出力を分岐させた信号をアッテインバーターへ入力してプラスマイナスを反転させたLFOを作り、チャンネル2のVCAのCV入力に接続して左右へパンニングさせています。

動画ではLFOが0Vの時には無音となっていますが、二つのVCAのオフセットノブを上げることで、LFO=0V時に左右両方から音が出る状態にすることもできます。

 

VCA Patch4. VC Crossfader

二つのVCAの出力をミックスして二種類の音をクロスフェードさせるパッチです。 コードサウンドとルートの単音を別々のVCAのシグナル入力へ接続し、Quad VCAのミックス機能を利用してアウト2から出力させることで二つの音をミックスします。

バイポーラのLFOをチャンネル1のVCAのCV入力に接続するとLFOの出力がプラスの時は音量が大きくなりマイナスの時には無音になります。次にLFOの出力を分岐させアッテインバーターへ入力しプラスマイナスを反転させたLFOを作り、チャンネル2のVCAのCV入力に接続すると片方の音量が一番大きい時はもう片方の音が消えるクロスフェードとなります。

 

VCA Patch5. Ducking

鳴り続けるコードサウンドの音量をキックのタイミングで小さくするダッキング/サイドチェーンパッチです。

ゲート信号をマルチプルで二つに分岐させ、片方はキックのトリガー入力へ接続、もう片方はエンベロープのトリガー入力に接続します。別のオシレーターからのコードサウンドの出力をVCAのチャンネル2のシグナル入力へ接続します。

キックと一緒にトリガーされるエンベロープの出力をアッテインバーターに入力してマイナスのエンベロープを作り、それをコードが入力されているチャンネル2のVCAのCV入力に接続します。これでエンベロープの設定に応じてキックをトリガーすると同時にコードサウンドの音量が小さくなるサイドチェーンとなります。

 

 VCA Patch6. VC Delay Feedback

ディレイのフィードバックをVCAを介してCV制御するパッチです。

アルペジオのサウンドをレベルツマミを最大にしたVCAのチャンネル2 に入力してからドライ100%に設定してあるディレイのオーディオ入力へ接続しその音を出力します。

センドされたディレイ音とミックスするため、Quad VCAのアウト2をディレイに入力しています。そして1回分のディレイの出力となるディレイモジュールのT2アウトの出力をVCAのチャンネル1シグナル入力へ接続します。これにより、遅れてきたディレイ音がアルペジオの音とミックスされてディレイに入力され、ディレイのフィードバック経路ができました。

VCAのチャンネル1のCV入力にLFOを接続することでフィードバックをCVで制御することが可能になります。

 

VCA Patch 7. Half Wave Rectifier

プラスマイナスで揺れる電圧のプラス側だけを取り出すレクチファイアパッチです。

VCAのCV inは0以下の電圧は無効で0Vとして動作する性質を使います。5Vのオフセット電圧をレベルツマミを絞り切ったVCAのシグナル入力に接続し、VCAのCV入力にマイナス〜プラスの範囲で動くバイポーラLFOを接続すると、LFOがプラスの時のみCVを出力するHalf Wave Rectifierとなります。

動画ではオシレーターのFM入力にLFOの出力をパッチして確認しています。

VCA Patch 8. LFO Amount Modulation

 LFOのモジュレーションの深さを別のLFOでモジュレーションするパッチです。

下のパッチでは、フィルターのuVCFにオシレーターの音を通しています。下降ノコギリ波のLFOをVCAのシグナル入力に接続し、その出力をuVCFのカットオフをコントロールするFM1入力へ接続します。

次に、それよりゆっくり動く三角波のLFOを同じVCAのCV入力に接続し、アッテネーターノブを右に回していくと、LFOのレベルに強弱がつきカットオフモジュレーションの深さが変化します。

 

VCA Patch 9. Gating triggers

クロックのようなトリガー信号のストリームのON/OFFをLFOでコントロールし、リズムを作るパッチです。

一定間隔のリズムを刻むトリガー信号をVCAのシグナル入力へ接続し、その出力をハイハットのトリガー入力へ接続します。VCAのLevelノブを絞り切った状態から右に回していくとトリガー信号のレベルが0から上がっていきあるところでハイハットが鳴り出します。

LFOの出力をトリガーが入力されているVCAのCV入力へ接続すると、LFOの揺れ方に応じてトリガー信号のレベルに強弱がつき、LFOレベルが低いところでハイハットが鳴らなくなります。ハイハットが鳴るリズム自体は一定に保つことができます。

トリガー信号がハイになっている途中で鳴ると、ハイハットの音のなりはじめのタイミングがトリガーの頭とずれてしまうことがあるので、トリガーは出来るだけ短い信号にします。
動画の最後のように、使用しているLFOを音色を変えるCV入力にも同時に使えます。

VCA Patch 10. Amplitude Modulation (AM)

VCAに入力したオシレーター(キャリア)の音量を異なるオシレーター(モジュレーター)でモジュレーションするAmplitude Modulationパッチです。

Buchla & Tiptop Audio Dual Oscillator Model 258tの上段のオシレーターをキャリアとしてその出力をVCAのシグナル入力に接続します。258tの下段のオシレーターをモジュレーターとしてVCAのCV入力に接続します。
モジュレーターのピッチを可聴域にすると倍音の多い音を生み出す効果があり、可聴域以下のLFOレンジまでピッチを下げた場合はトレモロのような効果になります。

可聴域でAMして作った音色に音階をつけたい場合、ピッチCVをキャリアだけでなくモジュレーターにも同じCVを入力すればAMで作った音色の雰囲気を保ったまま音階をつけることができます。

VCA Patch 11. Creating Velocity

ハイハットのヴォリュームエンベロープをLFOで強弱をつけるヴェロシティーパッチです。

ハイハットの音はVerbos Electronics Noise&FilterのNoiseアウトをVCAのシグナルインに接続し、CVインにALM Busy Pip Slope mk IIのエンベロープを入力しています。

動画でのリズムパターンはALM Busy Pamela's New WorkoutのOutputs1でバスドラムモジュールTiptop Audio BD909をトリガーし、4倍の速さに設定したOutputs2でハイハットをトリガーしています。ハイハットのトリガーは後述するパッチングのためにマルチプルを経由して接続しています。

ノイズを通しているVCAのCVインにパッチする前に、エンベロープを一度別のVCA(ベロシティ用VCA)のシグナルインに通します。これによりエンベロープの出力レベルをVCAのLEVELノブで調節できるだけでなく、CVで強弱をつけることが可能になります。
今回はPamela's New WorkoutのOutputs3から出力させている1/1.5の速さの三角波LFOを、ベロシティ用VCAのCV入力に接続し、アッテネーターノブを右に回すことによって16分音符で刻んでいるハイハットの音に強弱をつけました。

上記のパッチングの場合、ハイハットが1回トリガーされてから次のトリガーをする間もLFOの波形が変化するためハイハットの発音中にエンベロープのレベルが変化してしまいます。パッチをさらにブラッシュアップしたい場合は、分岐したハイハットのトリガーをサンプル&ホールド(SSF/Divkid RND STEP)を使ってLFOをハイハットのトリガーでサンプリングした電圧を使えば、発音している間LFOの信号をホールドしたCVを作り出す事ができ、より本来のベロシティに近いパッチになります。実際に先程のLFOを接続していたケーブルをRND STEPの出力と繋ぎ変えると、ハイハットのエンベロープのレベルが発音ごとに変化するようになりハッキリと強弱がつくようになりました。

最後に強弱をつけているサンプル&ホールドのCVをPip Slope mk IIのDecay CVインに入力してハイハットの音が大きい時はオープンハイハットのように長くなるようにしてみました。

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